コラム
社会保険とは?基本情報・各制度の解説
社会保険は、日々生活していく上で、労働者個人を守るための最低限の保障です。
事業形態や会社の規模に寄りますが、加入が義務付けられています。
今回は、社会保険の基本的な情報と各制度を解説していきます。
社会保険とは
社会保険は広く見ると、病気やケガ、出産、失業、障害、老齢、死亡等に対して必要な保険給付を行う公的な保険を指します。
広義での社会保険は、会社員が加入する被用者保険(狭義の社会保険と労働保険)と自営業者などが加入する一般国民保険に分けることが出来ます。
【狭義の社会保険】
狭義の社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つに分かれ、労働保険は、雇用保険・労災保険の2つを合わせた言葉になります。
一般的に社会保険というと狭義の社会保険を指すことが多いです。
労働者勤務の場合に控除される社会保険
健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険の4つは正社員や派遣社員、アルバイトなどの従業員から保険料が控除されます。
労働保険にあたる労災保険の保険料は、事業主のみが負担し、1年分まとめて支払うため従業員に負担の義務はありません。
4つの社会保険についてそれぞれ解説していきます。
【健康保険】
健康保険は、医療給付、手当金などを支給して生活を安定させることを目的とした社会保険で、会社で働く人とその家族に適用されます。
1.会社で働く人に対して適用されるケース
・病気やケガをした時
・病気やけがで会社を休み、給料がでないとき
・亡くなったとき
・出産のため会社を休み、給料がでないとき
・出産をしたとき
2.その家族に適用されるケース
・病気やけがをしたとき
・亡くなったとき
・出産をしたとき
怪我や病気は病院等での医療費の自己負担が3割、事業所が7割負担となります。
健康保険は、個人事業主や学生等年齢、性別問わず加入義務がある国民健康保険と同じ役割を果たします。国民健康保険と健康保険の違いですが、健康保険は会社と従業員で保険料を折半する点です。
【厚生年金保険】
厚生年金保険は公的年金の一つになります。
公的年金は、国民年金(日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人)・厚生年金(厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務するすべての人)・共済年金(公務員・私立学校教職員など)の3つがあります。
公的年金は日本在住のすべての人が加入を義務付けられています。働き方で加入する年金がことなります。
厚生年金保険に加入している人は、基礎年金に加え、厚生年金を受けることが出来ます。
【介護保険】
介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを創るために制度として導入された社会保険です。介護保険の考え方は、自立支援・利用者本位・社会保険方式の3つがあり、制度が設計されています。
・自立支援:単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする。
・利用者本位:利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度
・社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用
介護保険では、市区町村の定める介護認定の対象者のみが認定レベルに応じて様々な介護サービスを受けることが出来ます。
基本的に居宅系・施設系・地域系の3サービスを1割負担で受けることが可能です。
【雇用保険】
雇用保険は、失業した場合に失業給付金やハローワークでの求職支援などが受けることができる社会保険です。
失業の予防、雇用状態の是正および雇用機会の増大、従業員の能力育成・向上などの目的があります。
適用要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、31日以上の雇用見込みがあることです。加入手続きは、事業主が行い、従業員は自ら加入の要否を確認出来、現在未加入でも遡って加入できる場合もあります。
企業は、労働者を新たに雇い入れた場合に管轄のハローワークに雇用保険の被保険者資格取得の届出を提出しましょう。
雇用保険の被保険者資格取得の届出を行う際のポイントとして、
- 労働者を1人でも雇っていれば雇用保険の加入手続きが必要
- パートタイム労働者も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続きが必要
- 従業員には、雇用保険の加入手続きがなされたことを確実に把握させる
健康保険と国民健康保険の違い
日本国民は、必ず何らかの公的医療保険に加入しなければなりません。特殊な件を除いて、健康保険組合に加入していない場合は一般的に国民健康保険に加入します。
健康保険と国民健康保険の違いを見ていきましょう。
【加入対象者】
健康保険の加入者は、法人企業勤務の会社員に対し、国民健康保険の加入対象者は、健康保険や共済組合に加入していない人・扶養に入っていない学生・年金受給者・自営業者等になります。また、法人企業に勤務していた会社員が会社を退避した場合、海外から帰国した際、他の健康保険に加入することが出来ない場合も国民健康保険に加入する必要があります。
【加入する団体】
健康保険に加入する際の加入団体は、勤務している企業が中小企業の場合は協会けんぽ、大企業で健康保険組合に加入している場合は健康保険組合になっています。
国民健康保険に加入する場合は、加入団体は住居のある各市町村になります。管轄の市役所や区役所に出向き手続きを行います。
【扶養の有無】
健康保険と国民健康保険には、加入対象者・加入団体などに違いがありますが、両者を最も大きく隔てるものは扶養の有無になります。
健康保険は、被保険者が扶養している配偶者や親といった親族を被扶養者として扶養に入れることが出来ます。被扶養者が何人いても被保険者の健康保険料は変わりません。
一方で、国民健康保険は、扶養もしくは被扶養者といった概念そのものが存在しません。
そのため夫婦で加入する場合、夫婦2人がそれぞれ被保険者になります。
【保険料の計算】
健康保険と国民健康保険は、保険料の算出方法にも違いがあります。
健康保険の保険料算出に重要なのが、被保険者本人の収入や年齢です。
保険料の基本は、収入を元にして算出します。
基本給・通勤手当・残業手当・住宅手当などを合算した標準報酬月額を計算し、その標準報酬月額に応じた保険料を算出します。
被保険者が40歳以上64歳以下だった場合、介護保険料が加算される第2号被保険者に該当するため、通常の健康保険料に介護保険料をプラスした金額が健康保険料となります。
この保険料は事業所と被保険者で折半する形で支払います。
国民健康保険の保険料計算は、世帯単位で決定します。
世帯に属する加入者ごとに、医療分・支援分・介護分の分野でそれぞれ所得割額と均等割額を計算し、加入者ごとの保険料を算出します。その後、加入者ごとの保険料を合算して世帯の保険料を算定し、その世帯の世帯主に被保険者全員の合算した保険料を請求します。
【その他】
健康保険にあって、国民健康保険にない制度があります。それが、傷病手当金と出産手当金です。この二つの制度も生活を保障する大切な制度です。健康保険加入者は有効に活用しましょう。
社会保険とはまとめ
以上、社会保険について基本的な情報とそれぞれの制度について解説してきました。
社会保険は日本国民の生活を保障する最低限の制度になります。手取りが減ってしまうという欠点はありますが、長く見れば損にはならないので安心してください。
特徴や申請方法をよく把握し、加入漏れのないように加入申請しましょう。
コラムの著者
認定支援機関 株式会社アドベンチャーワン 代表取締役。補助金申請と融資の活用に精通したコンサルタント。主に小規模の~中規模企業の資金調達を支援し数多くの成功事例を持ちます。迅速かつ正確な申請手続きと、効果的な資金活用のアドバイスを提供します。補助金を最大限に活用したい企業にとって、頼れるパートナー。
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