中小企業の売却価格の目安は「時価純資産+営業利益の数年分」で計算する年買法がよく使われます。ただし実際の価格は買い手との交渉で決まります。この記事では計算式と例、数字の整え方、注意点を説明します。
年買法とは
年買法は、時価純資産に営業利益の数年分を「のれん」として上乗せする簡便な評価方法です。上乗せする年数は3〜5年とされることが多いものの、決まった基準はありません。
評価額の目安 = 時価純資産 + 調整後の営業利益 × 3〜5年
計算の例
次の数字はすべて説明用の仮の数字です。
| 帳簿の純資産 | 3,000万円 |
|---|---|
| 含み損(回収できない売掛金) | −200万円 |
| 時価純資産 | 2,800万円 |
| 営業利益の平均 | 1,200万円 |
| 役員報酬の調整 | +300万円 |
| 調整後の営業利益 | 1,500万円 |
| 評価額の目安 | 2,800万円+1,500万円×3〜5年=7,300万〜1億300万円 |
評価方法の比較
評価方法は大きく3つの考え方に分かれます。会社の状況に応じて使い分け、複数を比べることが一般的です。
| 考え方 | 代表的な方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 資産に着目 | 時価純資産法 | 資産が多い、利益が小さい会社 | 将来の稼ぐ力を反映しにくい |
| 資産+利益 | 年買法 | 中小企業の概算 | 年数に明確な根拠がない |
| 利益・現金に着目 | DCF法 | 事業計画が立てやすい会社 | 前提によって結果が大きく変わる |
| 市場と比較 | 類似会社比較法 | 比べられる上場企業がある会社 | 規模の差の調整が難しい |
実態の利益を出すための調整
決算書の営業利益をそのまま使うと、実力を正しく表せないことがあります。買い手が知りたいのは、新しい経営者の下で出せる利益です。
- 役員報酬:後任者に支払う想定より多い分は、利益に足し戻します
- 私的な費用:事業に関係のない費用は足し戻します
- 一時的な損益:一度きりの訴訟費用や補助金収入は除きます
- 含み損益:回収できない売掛金や不動産の時価を純資産に反映します
決算書に載らない価値はどう扱うか
検索からの問い合わせ、顧客リスト、ブランドなどは、計算式に直接は出てきません。それでも買い手が上乗せの年数を判断する材料になります。逆に、特定の検索キーワードや社長個人への依存は、評価を下げる材料です。
当社の簡易企業評価でも、これらは金額に自動で上乗せしていません。データを確かめないまま上乗せすると、過大な評価になりかねないからです。詳しくはWeb資産の整え方をご覧ください。
提示された金額をうのみにしない
中小M&Aガイドラインは、過大なバリュエーションを示して契約を勧めることを禁じています。高い金額の提示だけで支援機関を選ぶのは危険です。
確認したいのは、手法、前提、どの数字を調整したかです。仲介者が示す金額は参考の簡易評価であり、正式な評価が必要なら公認会計士や税理士に依頼できます。
よくある質問
年買法の年数は何年が正しいのですか。
決まった正解はありません。3〜5年とされることが多いものの、業種、成長性、利益の安定性、買い手の事情で変わります。
赤字の場合、年買法は使えますか。
上乗せが0円となるため、時価純資産が中心になります。実態の利益を調整しても赤字の場合は、事業の一部を切り出すなど別の検討が必要です。
評価額で必ず売れますか。
売れるとは限りません。評価額は目安で、実際の価格は買い手との交渉で決まります。
まとめ
中小企業の売却価格の目安としてよく使われる年買法の計算式を、例とともに説明します。純資産法やDCF法との違い、実態の利益の出し方、金額が交渉で変わる理由もわかります。
自社に当てはめると判断に迷う点も多いはずです。当社の無料 簡易企業評価なら、決算書の数字から価値の目安を確かめられます。


